Dream
知らない男と、小さな部屋で仲良く話をしている。なんとなく間取りが自分の部屋に似ていた。なにかの約束があって、私はそろそろ帰ると言う。相手の男が「じゃあな」と言う。
その部屋から出ていく自分の姿を見つめていた。何故か自分の心だけが部屋に残っていて(幽体離脱?)、そこからの様子を見ていた。
一人になった見知らぬ男は「よしよし」と言いながら笑顔で何かを考えている風だった。その時、トイレの流し台の方で音がする。こわばった男が緊張しながらドアを開けると、そこには水色の半袖シャツを着た中太りの男が、鏡に向かって一生懸命歯磨きをしているところだった。
こちらに気づいた水色の男が言う。「やあ、こんにちは!」
場面は変わって外。先程の見知らぬ男と、水色の半袖シャツの男と、工事現場で使うような黄色と黒のトラロープを何故か体に2周ほど巻きつけている女性、そして私の4人がいる。
ロープの女性は水色シャツの男が連れてきたらしい。「見て分かる通り体を縛っているんだが」と前置きするがどう見ても自由に動いている。趣味の悪いファッションにしか見えない。
「この娘はある高校の生徒なんだ」と水色男が言う。「詳しい話は車で話そう」見るとワゴン車がぽんと出てくる。女性とおなじように車体にトラロープを巻いている。
何故か私が運転席に座らされる。それがさも当たり前のように、他の人間がそれぞれ席に座る。見知らぬ男が助手席に来たようだが、何故か姿が見えない。透明なのに、そこに声と存在を感じる。
出発してからしばらく、見知らぬ男と水色男は話し込んでいたが、私が赤信号で停止線を少し過ぎてからブレーキをかけたのを見て「ちょっと下手くそじゃないか?」と言う。「すみません、うまく運転できないんです」と私が言う。現実での私は車など運転できない。「アクセルとブレーキを踏み間違えそうになって……」
その話を無視するかのように、二人の男が話を戻す。「それでさっきの話なんだが……」
突然世界が暗転して、某有名推理アニメの話が始まる。茶色い山高帽をかぶった太り気味の刑事と、眠って事件を解決するひげのへっぽこ刑事が順番に視界に映る。「被害者の名前は……」
Real
この珍妙な日記を書こうと思い立ってから、もう3年にもなる。
当時の私は、かなり精神的に参っていた。仕事面でうまくいかず、転職の時期とも重なっていたし、母親との間には悪い、というほどではないがなんとも言えない微妙な空気が流れていた。新しい仕事先では常人ではありえないような凡ミスを連発。上司からは話しかけるな、とでも言うような嫌悪の雰囲気が流れる。
書く詩は段々と影が濃くなり「いっそ気を狂わせたい」という理由から夢日記を書き、陰鬱な愚痴をこれでもかと散りばめ、鬱々とした日常を送っていたように思う。
そうして今の私はというと、当時ほど自分の人生に悲観や絶望はしていない。
あれから仕事は変わっておらず、当時の嫌な関係はない。自分が仕事に慣れたのもあるだろう。仕事仲間も含め良好な関係を保っているように思う。
母は相変わらずあまり外には出られないが、特別仲が悪いというわけでもない。たまに実家に帰って、貰い物のおかずを分けてもらったり、預け置いている季節モノの服を取り替えたりしている。
学生から社会へと出た頃から、私は「傍観者」であることを強く望んでいた。星に住む生き物の一員としてではなく、すべての出来事を遠くから見つめられる、理想的な存在。誰にも語りかけず、逆に誰からも語りかけられない。この世の何者でもない、ただそこにあるだけの存在。そういうものになりたかった。
月日を重ねてある程度時間をとってみれば、その願いは割とありふれたものであることがわかった。私自身はこの世の中の主役でも何でもなく、時代は私に生きること以外のものを強要することはなく、日常は淡々と流れすぎていく。
人生における大きな夢。叶わないと思っていた夢。何をするでもなくそれらを「勝手に」叶えてしまった私は、やはり今まで通り何をするでもなく、ただ生きているのだ。
雲のない夜空に輝く月が、とても美しかった。