ABILITY3.0所感

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 タイトルの通り、インターネット社の国産DAW「ABILITY 3.0」を購入しました。

 今年頭にウィンターセールでDL版の優待販売価格が18000円くらい(DAW最上位版の価格最安じゃないですかね)で買えました。

 面白いのがクロスグレード版の条件で、やったら範囲が広いんですよ。

クロスグレード対応表。画像は公式。

 各社DAWに対応はまあいいとして、VOCALOID製品の対応幅がおかしいです(笑)。これインタネ社以外のボカロ(クリプトンとかAHSとか)でもクロスグレード対象らしいです。

 さて、現在Cubaseを使っている私ですが、なぜわざわざABILITYを買ったかというと、ABILITYの独自機能として「コード、アレンジ支援機能」というのがあるからですね。

 とにかく私は編曲、特に伴奏やアレンジが壊滅的に下手なので(楽器の演奏経験なし、未だにステップ入力ではなくマウスでポチポチメロディを入れてたりします)、この手のMIDI伴奏の入力機能は重宝してます。新しい歌を作るときはCubaseとBIABを必ずセットで起動するくらいには依存してます(笑)。

 あとはCubaseが中位グレードのArtist版なので、そろそろ最上位グレードのDAWを買っちゃってもいいかなー、という。そう思っていたときに丁度ABILITYの最安セールをやってたので「いいじゃん、これ」という感じで即買いました。

 とりあえず、細かいところを見ていきましょう。

 

GUIはいい感じ

ABILITY3.0のソングエディター。メイン画面。

 エディター画面はこんな感じ。上部にピアノロールやミキサーなど各エディターや、よく使いそうな機能を呼び出すためのボタンが並んでいます。このあたりはなんとなくBIABっぽい。

 MIDIトラックやオーディオトラックを自動で色分けしてくれるのはいいですね。Cubaseだと新規追加したトラックの色分けは自分でやらないといけないので。

 起動時間も結構短い方で、VST起動時も含めめちゃくちゃ早くて軽いです。Cubaseだと重くて動かないプラグインも普通に動いてくれます。Cubaseみたいに認証用のUSBがないのもグッド。

 ABILITYは打ち込みに強いDAWのようで、ピアノロールからスコアエディター、昔懐かしの数値入力まで、MIDI入力の選択肢が多いのが面白いところです。私はもっぱらピアノロールばかりですが。

ピアノロールエディター。色使いがちょっと古くさい。

 ピアノロール画面はこんな感じ。左のMIDIトラックを選択した分だけエディターに表示してくれます。これ結構便利。

 全体の表示がスコア表記に準拠しているので、Cubaseの打ち込みに慣れてしまっているとかなり使いづらい印象。まあ使っていれば慣れるのでしょうが。

ミキサーのデフォルトは青基調のデザイン。

 こちらはミキサー画面。ソングエディターの方でミキサー番号を指定し、必要なものだけ表示させる方式。1~4まで指定できるので使い分けできて便利。

 左側にはミキサーで編集したログが表示され、VSTやパン・レベルの編集で元に戻す、やり直しが使えます

 番号の振り分けでひと手間かかるのと、各トラックの最大レベルが表示されないのがちょっと気になりますが、Cubaseのミキサーよりはずっと見やすく洗練されている印象。

 

VOCALOID連携は……

 ABILTYはVOCALOID Editorとの連携機能がありまして、スタンドアローンのV3/V4 EditorをRewireで繋げられます。私はVOCALOID4 Editor、VOCALOID5、そしてボカキュー(4.5)を持っているので、試しにV4 EditorをRewireしてみることに。

ABILITY上ではVOCALOID SSW Rewireとして表示。

 このRewire連携ですが、完全同期しているわけではなく、ABILITY側のタイムラインが優先されます。間違ってV4 Editor側のタイムラインを変に選択して再生してしまうと同期されず、挙動がおかしくなります。

 ボカキューの完全連携の快適さを知っているため、このあたりはなんともはや。

 ちなみにVOCALOID5はタイムラインがきちんと同期されます。なぜかCubaseはVOCALOID5でタイムラインが同期されないんですよね。同じ会社が作ってるのに……。

 

VSTはちょっと難あり

 個人的にABILITYで一番使いづらいと感じたのがVST周りです。MIDIトラックからVSTiを指定して、ソングエディター上にVSTトラックが別に出てくる感じです。Cubaseでマルチアウトを使うときと似たような感じ。

 問題なのがこのVSTトラックで、マルチアウト可能なVSTiを読み込むと自動で全てのマルチアウトトラックをソングエディター上に表示しやがります。

 例えばABILITYでKontaktを開くと、

最初に開いたときの反応(゚Д゚)ハァ?

 こんな感じで、50以上のVSTトラックが一気にエディター上に現れます。これがとにかく見づらいのなんの。

 一応読み込んだVSTi側のウィンドウで出力するトラックを選べるBUSというボタンが出てくるのですが、なんとこのボタンVST3でしか表示されませんVST2は非対応。VST2音源を使うたびに大量のマルチアウトがソングエディターに表示され、非表示にもできないわけです。

 ちなみに私がよく使うNIのKontaktやKomplete KontrolはVST2しかありません。お察し。

 まあマルチアウトはドラムくらいでしか使わないので、折りたためば済む話なのですが……。

ミキサーをちゃんと指定しないとこうなる。

 ちなみにこの仕様のせいでミキサー画面もエライことになります(笑)。非表示にするにしても50以上もマルチアウトがあったら面倒なので、Mixの際は使うトラックを別のミキサーで選択してます。

 あとは相性の悪いVST/VSTiがいくつかあるようです。なぜか同梱されているSampletank 4 SEとの相性が超絶悪い(笑)。音源を読み込んで、一度再生/停止するとまた音源を読み込まないと音が鳴らなかったり。

 私がよく使うiZotopeのプラグイン(OzoneやNewtron)も、一度非表示→ミキサーで再度表示しようとするとCPU使用率に関係なく落ちます。

 何回か使ってると「あ、これやったら落ちるわ」というのがなんとなくわかってくるのが面白い(笑)。

 

独自機能がかなり便利

 ABILITYには結構な数の独自機能がありますが、やはり私にとって重要なのはコード・伴奏の自動生成機能。

スコアエディターからEZアレンジを選んだところ。

 伴奏の自動生成はラフな伴奏をさっと作るEZアレンジと、内蔵されている伴奏データから個別選択して使えるアレンジツールがあります。どちらもかなり便利。

メディアプラウザからアレンジツールを選んでいるところ。

 BIABはベロシティやタイミングなどの演奏ニュアンスが最初からMIDIに反映されていますが、ABILITYの伴奏機能はいわゆる「ベタ打ち」。そのまま使うと打ち込み臭くなるので、ランダマイズなどで調整が必要です。

 とはいえパターン数が多く、一部分のアレンジのみ抜き出して使ったりもできるので、すごくかゆいところに手が届く感じ。

 

サポート面は多分最強

 製品そのものとはあまり関係のないところですが、国産DAWなのもありサポートはかなり充実してます。

 マニュアルはちゃんと日本語で書かれているし(ここ重要)、わからない所があればインタネ社公式のサポートに日本語で問い合わせもできます(ここ重要)。

 Cubaseは国内の使用者が多いだけあり、ネットで調べれば情報がいくらでも出てくるわけですが、それとはまた違う方向で安心感があります。

 

結論、結構いい

 VST周りの仕様で使いづらい部分が多々ありますが、伴奏支援機能や打ち込みの豊富さなどのアドバンテージもあり、全体として見れば割と手堅くまとまってるな、という感じ。

 ABILITYの前身であるSinger Song Writerもそうらしいですが、作曲/編曲の初心者に対しての間口が広いのが好印象。私みたいに伴奏がまともに作れない人には、付属する音源とアレンジ支援機能だけで十分元が取れそう。

 これからはメインDAWをABILITY、VOCALOIDの打ち込み用にCubase、といった感じで使い分けていこうかと思います。

 ということでABILITY3.0のレビュー記事でした。