インターネット社VOCALOIDのクロスシンセシス所感

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 インターネット社VOCALOIDを(男性含め)ほぼ全員揃えてしまったので、個別記事とは別にクロスシンセシスによる声の変化もまとめて記事にしたいと思います。

 インタネボカロの一番面白いところは「クロスシンセシスによる声のエディット幅の広さ」だと私は思っています。現状出ている8人のライブラリ全てがクロスシンセシス可能で、特に女性ライブラリの組み合わせの自由度が非常に高いです。

 最近は歌声合成エンジンも種類が増え、歌わせるだけならVOCALOID以外にも選択肢が沢山あるわけですが「声質そのもののエディット」ができるものはあまりないような気がします。その点でVOCALOID3/4の同社ライブラリ間のクロスシンセシスはもう少し評価されても良いような気がします(VOCALOID5で使えなくなってしまったので、もはや「過去の遺産」と化している感は否めませんが……)。

 私が現在所持しているライブラリは
・GUMI(Megpoid) V4(10種)
・音街ウナ(2種)
・Lily V3(2種)
・kokone
・Chika
・CUL
・リュウト(ガチャッポイド) V3
・がくっぽいど V4(3種)
 以上21種類になります。

 単純な組み合わせでも420通り、メインとセカンダリーの入れ替えも考慮すると(声の混ぜ方が違うのか、XSYを中間値にしても入れ替えると結果が変わります)840通りという途方も無い数になってしまうので(笑)、実際に自分で色々試してみて「これはいいなー」と思った組み合わせをメインライブラリ毎にいくつか紹介しようと思います。

 同一ライブラリ間の組み合わせ(GUMI同士等)はここでは紹介しません。ライブラリを持っている人はすでに試しているでしょうし、今回は違うライブラリ同士を組み合わせて「声をエディットする」ことが目的なので。

 あとGUMIに関しては基本的にV4基準です。一部ライブラリとの組み合わせではV4よりV3再現の方が相性が良かったりするので、その場合のみ特記します。

 XSYは中間値(64)固定。実際に歌で使用する際はXSYを平均30~50あたり、グロウルやファルセットなど固有の効果を与える時に高め(低め)に調節すると上手く混ざります。

 パラメータはデフォルト、デモとして歌わせているのはGUMI V4のデモソング「Possibility」(虹原ぺぺろん様制作)の冒頭サビです。

 

GUMI

 ライブラリが10種類もあるので、女性ライブラリであれば基本的に合わない相手はいない。表現の幅が広くV4でグロウル使用可能なため一番出番が多い。

 

GUMI Native×kokone

 万能なNativeにファルセットを付加できる組み合わせ。GUMIとkokoneは声の厚みが似ているため合わせやすい。

 

GUMI Power×ウナ Spicy

 V4同士の組み合わせ。Powerの張り上げ声にウナSpicyのキレをプラス。

 

GUMI Power(V3)×CUL

 

 CULは声の厚みがほとんどないので、GUMIで合わせるならV3を使うのがおすすめ。

 

GUMI Adult×Lily V3

 YAMAHA公式でも紹介されている組み合わせ。圧倒的な低音の強さが特徴。

 

GUMI Sweet×Chika

 SweetはChika・ウナと相性良し。中間値でもうまく混ざります。

 

音街ウナ

 ライブラリ2種それぞれが両極端な性能のため、組み合わせの幅は広い。設定上の年齢が近いためか、女性陣では珍しくリュウトとの相性も良い。

 

ウナ Sugar×kokone

 柔らかいSugarと、ファルセットが美しいkokoneの組み合わせ。声の伸びが良い。

 

ウナ Sugar×Chika

 Sugarに芯が通った感じ。Sweet系×Chikaは基本的に相性が良い。

 

ウナ Spicy×GUMI Sweet(V3)

 Spicyの主張がやや抑えられたイメージ。×Sugarとはまた違った感じに。

 

ウナ Spicy×リュウト

 セカンダリーにリュウトが入る珍しい組み合わせ。特に低音部が中性的で面白い。

 

Lily

 低音が強く声に厚みがあるため、Sweet系とは致命的に合わない。組み合わせの選択肢こそ少ないものの、上手くハマればアダルチックな面白い声が出せる。Nativeは元々の出来がアレなためどう頑張っても無理。

 

Lily V3×GUMI Power

 中~高域を補強する組み合わせ。バンド系の曲にはめっぽう強い。

Lily V3×kokone

 不思議な響きの組み合わせ。高音部をどちらに振るかで大きく印象が変わる。

 

kokone

 Native寄りでかつ個性が薄いため、ライブラリが一つにも関わらずある程度誰とでも組める。選択肢の少ないWhisper系やadult系の組み合わせの軸にもなる。

 

kokone×GUMI Whisper

 パラード最強の組み合わせ。透明で綺麗な高音を出せる。

 

kokone×Chika

 声質が似ているためうまく馴染む。kokoneの中心に一本線が通ったような感じ。

 

CUL

 完全にPower特化な声のため、メインで合うのは同じくPower系の面々。Power系自体種類が多いため選択肢もそこそこある。

 

CUL×Lily V3

 

 癖の強いPower系同士の組み合わせ。パラメータ調整次第ではかなり化ける。

CUL×ウナ Spicy

 恐らくPower系最強の組み合わせ。伴奏に絶対埋もれないマン。

 

 

 

Chika

 元々が一番扱いやすい声のため、メイン・セカンダリーともに汎用性高め。高音に強いライブラリと合わせると吉。

 

Chika×GUMI Native

 GUMIはV4・V3どちらとでも合う。声に表情が付けやすいのでおすすめ。

 

Chika×ウナ Spicy

 Chikaの弱点である高音部を補強できる組み合わせ。

 

リュウト

 一応男性ライブラリではあるものの、中の人(?)が女性かつ声に一番クセのある特殊なタイプ。がくぽほどではないが選択肢は少なめ。

リュウト×GUMI Sweet(V3)

 なぜか馴染む不思議な組み合わせ。中性的で中々面白い。

 

リュウト×CUL

 ボーイッシュなCULとも一応合わせられる。あと合うのはウナ Spicyあたりか。

 

がくっぽいど

 男性ライブラリのため選択肢は皆無に等しい。唯一低音の強いLily V3とのみ違和感なく組めるが、元々のライブラリが3種あるためわざわざ組み合わせる必要性は薄い。

 V3版は声の線が細いらしいので、もしかしたらリュウトともワンチャンいけるかもしれない。

がくぽ Native×Lily V3

 古参同士の組み合わせ。ネタ要素として入れるなら面白いかもしれない。

 

がくぽ Power×Lily V3

 中性的なイケメン。ロックを歌わせるなら大いにアリ。

 

まとめ

メインライブラリ 特におすすめのセカンダリー
GUMI LIly・kokone・Chika
ウナ Chika・CUL・リュウト
Lily GUMI・kokone
kokone GUMI・ウナ・Chika
CUL GUMI・ウナ
Chika GUMI・ウナ・kokone
リュウト ウナ・CUL
がくぽ 強いて言うならLily

 ざっと見てきましたが、やはりGUMIのライブラリ数の多さが全体のバリエーションを増やしている感じですね。

 AHS組もそこそこ種類が多かったり、男性のバリエーションは意外とYAMAHA組が多かったりもしますが、こと女性ライブラリにおいてインタネ組の組み合わせの多さに勝てる歌声合成エンジンは早々出てこないでしょう。

 

余談

 YAMAHAはVOCALOID5でクロスシンセシスを廃止し、AHSとガイノイドも歌声合成はVOCALOID5側に舵を切っている様子。クリプトンはVOCALOIDから離脱と、ここ1,2年でVOCALOID市場の形が大きく変わってきています(大体YAMAHAのせいだけど)。

 唯一インタネだけがV4 Editorの再販や定期的なセールでクロスシンセシスを推しているような状況(GUMIにとっては死活問題ですし)。

 恐らくインタネが新しいライブラリを出すことは今後しばらくないだろう……、と私は踏んでいます。クリプトンのように独自にエンジンを開発することもないでしょう(権利の問題で今までのV3/V4が使えなくなるのは、長期サポートを好むインタネが嫌うはず)。

 逆に、もしYAMAHAがVOCALOID5にテコ入れを加える……仮にXSYを復活させるようなことがあるとすれば、真っ先に動くのはインタネだろうな、とも思ったり。その手の対応はやたらと早い会社なので。

 今後の展開がどうなるか、非常に楽しみですね。