夜のままで

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痛みのない長い夢から醒めて
ひんやりとした床を
ゆっくりと飼いならすように撫でていた

太陽の光はカーテンの隙間を貫き
白く細長い線を
向かいの壁へとまっすぐ突き立てている

夢が夢であると 気付かないまま
潜り込んでしまうタイミングはいつ頃だろう

はっきりとした境界線の内側で
私たちは生きている

間違いとはとても些細なことで
道筋が少しズレたとしても
新しい方向へ 常に軌道修正を続けているし
それを強いられてもいる

いつまでたっても抜け出すことはできない癖に
境界線の内側をなぞるように一周して
なぜか堂々と 堂々としている

朝とは夜が来るから朝なのだ

空間を飼いならした私は
一杯のコーヒーを片手に
今日一日の軌道を再確認する

どうやらカフェインは絶望の発火剤らしい
世間の苦味を口にしながら
また孤独で孤高な旅が始まろうとしている

その出発点の先っぽで私は

夜のままでいい

霞のようにあやふやで
虹のように曖昧な
輪郭のぼやけた 一つの世界へ

夜とは朝がなくても夜であり続けるのだから

夜のままでいい