瞬間の詩 101~110

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恋はキチガイ
恋はキチガイ

恋をせよ
の一言で人を殺す
自分のことも知らないくせに
なんだか偉いふりをする

恋はキチガイ
恋はキチガイ

恋をせよ
の一言が地球を支配する
相手を思い通りに動かして
その状態を幸せと呼ぶ

平和とはなんぞや

恋はキチガイ
恋はキチガイ


氷の結晶に閉じ込められたバクテリアの目覚めは
きっと最高に気分の悪いものだろう

空に一滴インクが垂れたような
愛の形ももどかしく
生まれるのが遅すぎたような気がして

マッチ棒の飛行機と
わら半紙の飛行機と
ビー玉の飛行機が
同じ道を歩いてる

銀色の琥珀に朝はいらない


何を伝えようとも
君はその時その時のわかりやすい答えで
言葉を上書きしようとするだろう

それなりの肯定と
それなりの否定とをもって
別に望んでもいない批評を始めるだろう

自らの将来と
金のことばかり気にして
ちっとも理由に耳を傾けやしないだろう

沈黙こそ君にふさわしい


やさしくすると
きらいになるよのなかなので
なんにもしてあげられません


詞なんて書いてもお腹いっぱいにならないし
どう生きるにせよお金は必要で
そのためにやな気分になることもあるし
憂さ晴らしに詞を書いてみたりするわけで

心と言葉は知恵の輪みたいに離れないのに
お金だけが高みの見物をして
さも結末を知っているかのごとく
近所の人は笑っているのだ


恋に恋しているような
クリーム色のわらべ達
不思議な事もあるもので

時代はいつでも青臭く
苦くて食えたもんじゃない
褒める輩はいるけれど

意味のないのは今更で
それでも重たい黄昏を
押し付けあって過ごしてる

夢を夢見ているような
未来を語るわらべ達
不思議な事もあるもので


夕焼けうつした曇り空
ゆるりゆるりと沈んでく
うすオレンジのカーテンで
今日がどんどん遠ざかる

あれよあれよの世の中で
私はひとつ 年をとる
空はなんだかやな顔だ

なみなみ注いだコーヒーの
こんもりこもる薫りから
あんなことやらこんなこと
そのうち分かる 気がします


人と人との常識や
この掌のひもじさに
話をするには重すぎて
とうとう誰かを傷つける

触りもせずに見もせずに
先に誰かを傷つける

先に手を出す方が悪いのは明白であるからして
つまり僕は負けている
すべてのものに負けている
負けている

明日に明日がくるように
ここに助けはこない


「この世界にはね、千手観音のように手がいっぱいあって、目と鼻と耳と口が100個くらいあって、神様みたいになんでも知っていて、誰に対しても優しくて、背が高くてガタイのいい、イケメンで高収入のパーフェクトな男がいるらしいのよ。
その人の名前はね、シリアイっていうの。知ってる?」


自分の立ち位置を誰かに決められたら
首を横に振って逃げ出すだろうし
胡散臭い占いで未来を予言されても
違う方向へ歩いていこうとするだろう

僕が本を読むか読まないかは
君には何の関係もないけれど
ページをめくるその度に
運命は方向を変えていくのだ

世界はそういう風にできている