瞬間の詩 21~30

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何もかも白くなってしまえ、と言わんばかりの勢いで雪が積もっていく。雪柳は二度咲くのだ。温かいポタージュに舌鼓を打ちながら、私はその様子を見ている。スプーンの端から言葉がこぼれ落ちた。1ヶ月後、またここに来たいと思う。
新しいスーツを身にまとった、私の花は何回咲くだろうか?


君が隣りにいると、世の中が無機質な鉱物か何かに見えて仕方がない。
口紅は悪魔になるための道具なのよと君が言う。悪魔でも人を好きになれるんだなと僕が言う。
微笑みを肩に落とすと、空間は自然と縮まる。唇がせまってくる。
ミルクのような甘い嘘なら、信じてしまうかもしれないと思った。


膝というのはせわしない
伸びたり曲げたり 曲げたり伸びたり
何だかいつも動いている

クローゼットの金具みたいに
そのうち取れてしまわないか心配だ

蜻蛉の羽が羨ましい
素早く丈夫で 飛ぶことだってできる

人間は膝を素早く動かしたところで
準備運動にしかならないというのに


机とは妄想をするためにある。決して勉強をするためにあるわけではない。
机は世界中の森や海や砂漠に行ける。過去を遡ったり、未来をちらと拝見できる。こことは違う別次元の宇宙にだって飛べる。好きな人の裸も見られる。
私の机は5次元だ。こんな身近な所にあるものだとは、誰も思わないだろう。


君の目は僕を見ているようでいて、実は君自身のことしか見ていないんじゃないかい。
涙を流したところで、君自身の体に怨み、妬み、僻み、そういうものが常にくっついているから、いつまでたっても悲しいんだ。
そうだ、白い薔薇のつぼみをプレゼントしよう。
広がって秋になったら、またおいで。


身体のどこかに刺青があると
誰もその人を見ないようになる
刺青ばかり気にする

傷の付いた楓のようなもので
気になって仕方がないのだ

そのうち刺青や傷がその人なのだと思いこむようになる
波風を立てぬように 爪を立てぬように

私達は爆発物処理班だ

しかし その思考が最も危ない


リボンがついているか、そうでないか。その違いに気付いてあげないと怒るのが女というものらしい。いやはや何とも面倒な生きものだ。気持ちが泡立つのはわかるが、とにかく細かい。メレンゲじゃあるまいし。
私はそれを表に出すのが恥ずかしいから、カプセルにでも詰め込んでさりげなく渡すのである。


君はクッキーを持ってきた。ハート型で片方がバニラ、片方がチョコのやつ。真ん中で割れば僕達にそっくりだ。
君の言葉ががまるで蜂のようにプスリプスリと刺すもんだから、ついつい手が出て壁に叩きつけてしまった。ただそれだけの話なんだ。
別に悔やんでなどいないし、嫌いになったわけでもない。


彼女には夜がよく似合う。星空の下で佇む姿はまるで、光を浴びて呼吸をしている妖精のようだ。
今日は月を髪飾りにでもして、壮大な宇宙の冒険へと出発するのだろう。そうして時の歯車を回し続けた先に、彼女はきっと海を見るのだ。
いってらっしゃい。戻って来たら、土星の指輪をあげよう。


ある日突然、君から一枚の切符と、黄色い菊の花を手渡された。
「二人で一緒に行こ。花が枯れちゃう前に、誰も知らないどこか遠くへ」
旅をするのは嫌いじゃない、でも……。
でも、もし僕がその途中で、白や赤の菊を見つけてしまったら、君はどうするのだろうか。笑って喜んでくれるのだろうか。