巨人の輪郭

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鎮座する孤独は変化を求めるように
黒い扉の前でにらめっこして
毛の一本でも動くのをじっと待っている

他人とは要するに壁みたいな巨人のことで
よじ登ろうとする方がちゃんちゃらおかしな話だ

僕は巨人の影で休息を取り
巨人の足と足の間で雨宿りをし
巨人の歩く度に地震だと怯え
巨人の顔を見る度に不細工だと馬鹿にする

彼らが上を向いて息をしているのは
小さなことでも吹き飛ばしてしまわないようにという配慮なのか
彼らがくしゃみを腕で塞ごうとするのは
その拍子に飛び出す歪んだ自己愛を悟られないためか

巨人よ
何をそんなに躊躇をしている
僕は囲めば簡単にひっくり返るというのに
狭い道だけ残して
さも渋滞しているかのように見せかけるのはやめてくれないか

誰も転んだところを写真に撮られるのは嫌だろう

僕は常に
知らない巨人の背後に立ち尽くす人間だ
世間の風当たりを異常な程に気にして
危ないやつだと警戒されてしまう可哀想な人間だ

僕を紙切れにはしないでおくれ
しらを切り続けるのならばせめて
もう少しだけ社会というやつを眺めておいて欲しい

そうすれば僕は怠惰に寝そべり
血に飢えた巨人の輪郭をなぞってやろう