瞬間の詩 #31~#40

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#31

「銀河はどこにいたって、ただの銀河さ。でも人間は地球以外の場所にいると、人間じゃなくなるのさ」
男は紅茶を飲みながら宇宙の話をする。洗練された無駄のない、だけどひどく無駄な話。
嘘を言葉で塗り固めたら、午後のティータイムは大盛り上がり。覆い隠すということも、一つの真実なのだろう。

#32

お湯を注げばやってくる
3分くらいでやってくる

割り箸一番
あとのせ二番

タバスコ ゴマ油 マヨネーズ
気まま自由にゆうゆうと

乾食の感触
そんな間食を完食

スープもしっかり飲み干して

添加物?いいえ
塩分?いいえ
発ガン性物質?いいえ

「美味しい」んです

#33

柄にもなく誕生石とやらを買ってみたんだ。ペリドット――太陽の石。
石言葉は「平和・安心・幸福」。オカルトでも信じてみたいと思ったんだ。それが何かの糸口になるのなら。
でもどれだけその力を信じてみたところで、幾重にも覆いかぶさった僕の仮面を、綺麗に割ることは出来ないだろうけどね。

#34

人は皆主張したがる。誰かに自分のことを評価して欲しいから。
そりゃあ頑張るに越したことはない。私だって「もっと人気が欲しいよぉぉ」とか思うのだけれど、背伸びして掴んだ鉄棒を、いつまでも掴んでいられるとは思えない。
私は鉄棒ではなく、空を見ることにした。高さを気にしないことにした。

#35

今日は4月1日。4月1日であること以外、特に何もない日だ。
世の中はエイプリルフールだなんだと言っているが、私にとって嘘をつくのは日常茶飯事なのでどうでもいい。むしろ4月1日でなければ堂々と嘘をつけない人達はちょっと可哀想だ。
嘘は常に生きている人々の心の奥底に鎮座している。

#36

物事は常にトレードオフだ。何かを得ようとすれば別の何かを失う。逆に何かを失えば別の何かを得ることが出来る。失うことに戸惑っているそこのキミ。解決方法は実にシンプルだ。
いらないものを誰かにあげればいい。捨てるように与えればいい。そのうち誰かが捨てるように大切な何かをくれるだろう。

#37

藤とはビー玉である/おはじきである/種を弾き飛ばす/何とも滑稽である/沢山の種がパチパチとぶつかり合っている/机の上には命が広がっている/それを見ている私がいる/命を見下げる私がいる/それは宿命なのだ/藤は心を読んでいる/思った通りに飛んで行く/私とは使役する者のことだ

#38

人とは泣いている生き物のことです。涙を流さずとも、心の奥底では常に泣いています。
私の中は狭すぎて、私だけしか入ることができません。座っているだけで精一杯なのです。誰かのために悲しみを背負えるほどの大きさもありません。
私は自分のためにしか泣くことのできない、弱い人間です。

#39

ちぎられた封蝋を溶かして元に戻すように、僕らは常に誰かの背中を追いかけている。
つまらない見栄を張るためだけに指輪をし、そのうち心までをも汚していくんだ。
もうやめよう、こんなことは。君はただそこにいるだけでいい。僕は帽子であればいい。その優しい肌を、日差しから守るだけで十分だ。

#40

記憶の森をさまよい続けて、過去に打ちのめされてしまう。心の足が張って疲れちゃったよ。
約束なんていつも守らない。虚しくて仕方がなかったんだ。時は同じように流れていってしまうから。
今の自分を悔やんだりはしないけれど……もしも傷付かなかったら、私はどんな風に生きていたのだろう。