ピアプロという閉鎖空間の中で思うこと

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 こんにちは、玄川静夢です。今回はコンテンツ投稿型サイト「ピアプロ(piapro)」に関するお話。

 予め断っておきますが、私はこのピアプロという場所について、嫌いだなどと思ったことは全くありません。むしろVOCALOIDという一大ジャンルの、時代の風の一つの支えともなっているこの場所を、私は好きです。それらを念頭に置いた上でお読みください。

 私が作詞活動なるものを始めて1年強になりますが、その傍らには常に「ピアプロ」という場所がありました。音楽関係の経験が一切ない一般人でも参加のできる自由な場所。個人がそれぞれ「好きなもの」を作り出す場所。

 作詞活動を再開し、またその場所へと戻ってきている私なのですが、そこから常に、私の周りをついて回るものがありました。それは「閉塞感」です。分厚いクッションに思い切り押されているかのような、息のしづらい閉塞感。真っ暗な狭い夜道を、ろうそく一本で歩いていく感覚。一体自分はどこに向かおうとしているのだろうという、ありえない疑問が時々頭をもたげます。

私のピアプロ初体験

 作詞というものに初めて触れた時、つまりピアプロで作詞を始めた時は「この場所にある募集という募集に全部応募してやろう」というくらいの勢いと気持ちを持って、とにかく書きまくっていました。1、2分程度で終わる簡単なものから、普段は聞き慣れない民族音楽、歌よりもBGMとして出したほうが良いんじゃないかと思うようなもの、果ては曲として成り立っていないような曲にまで。

 当時は「この場所を征服してやる。楽曲リストに並ぶ作詞家クレジットを全部自分のものにしてやる」と思ってました。割と本気で(笑)。

 そんな感じで書きまくっていると、他の応募者さんの作品を見る機会が結構ありまして、よく参加している方ほどこちらも目に入りますから、ある程度「その人のパターン」というものが分かってきます。この人の論理は若干飛躍しすぎているな、この人は奇抜な単語を並べて気を引こうとしてるだけだな、この人はとにかく恋してばっかりだな、など。

 ちなみに過去作品も含め、現在ピアプロに投稿されている自分の作品のことを言うなら「平易な単語ばかり使って深いところに突っ込もうとしてるな、でも語彙が足りないから結局わけの分からんままだな」です(笑)。もっとも、曲として聴けばそうでないものもありますが。

歌い手のいない言葉の行き先

 さて、今までの私の詞も含め、それらのパターンを見ていると、私の書き方・詞に対する考え方が、ピアプロ内での環境では特に「異質」かもしれないと、そう思い始めた次第です。

 私が平易な単語ばかりを好んで使うのは「実際に歌ったときに気持ちよく歌えるため」という大前提があります。鼻歌でフンフン歌いながら、単純かつ一番鳴りの良い言葉を使う。アカペラで単語の意味がわからない箇所・一瞬詰まる箇所が出てきたらもうアウト。

 しかし御存知の通り、ピアプロで主に歌を歌うのはVOCALOIDです。人ではありません。有り体に言えば「機械」が歌います。

 さらにピアプロ内で制作された楽曲は、基本的には「ニコニコ動画への投稿」という形で世間様に公表されます。音楽サイトではなく、動画サイトです。聴く場所ではなく、観る場所です。

 こうなると当然、作詞に求められる要素も変わってきてしまうわけで。音の鳴りさえ良ければ、普段使わないような難しい単語を立て並べても、動画で歌詞を「読む」ことができます。聴覚以外にも視覚で情報を理解できるので、情報のキャパシティが増えます。視聴する年齢層も若者が多いですから、それらを簡単に消化することができる。

 従ってより多くの情報を詰め込もうと、歌詞はより難解な方へと進んでいこうとする。そして多少無理な言葉の入れ方をしても、機械に任せれば問題なく発声してくれる

 これを生身の人間に歌わせようとしたら、絶対に「NO」という返事が返ってきます。人間が歌う歌ではない。そもそも人間が歌える歌ではない。

「VOCALOIDが歌う前提なのに何を言っているんだ」とおっしゃる方がいると思います。それは全くその通りで、ですから私はその環境の中で「異質」だと思っているわけですし、現に私が作詞したVOCALOID楽曲動画の再生数は決して多くはなく、今こうしている間にもピアプロには難解な文章が投稿され、VOCALOID界隈では早口言葉が流行り、情報量の多い曲がニコニコ動画再生数の上位に来ているわけです(そのような曲ばかりではないということも、私は重々承知しております)。

 私が詞を書く目的は三つ。(今の所は)数日に一度起こる「とにかく書きたい」欲求を満たすため。私の書いた作品を、詩以上のより広い世界に発信するため。そして自分の書いた詞を、誰かに歌ってもらうためです。

新天地はいずこに?

 正直に申しますと、できれば私は、このピアプロという場所からさっさと脱却したい気持ちでいます。歌を歌う「人間」のいない空間でいくら頑張って詞を書き続けたところで、本物の作詞に敵うはずがないのですから。

 しかし現在の所、ピアプロに代わるような場所がない。一般公募の作詞コンペは月に何度も開催されるわけではなく、音楽関係のコンペサイトを覗いてもあるのは作曲・編曲・ボーカル募集ばかり、そして「本物」になるにはあまりにも生身の人間に対する詞の提供経験がなさすぎる。応募条件が「作詞を行った楽曲を入れたデモCDの提出」であるから応募以前に門前払い。

 かと言って、詞を書くのが月一ペースの作詞コンペだけというのはあまりにも少ない。それこそ「ちょっとした暇つぶし・ちょっとした趣味」の範疇に入ってしまいかねない。3日に1回、長くても週に1回は書かなければ気持ちが収まらない。こりゃどうしようもないなと。

 そういう意味では、募集ページを覗くたびに新しい投稿が出てくるピアプロは「非常に都合の良い場所」ではあります。書く対象ならちぎって捨てるほどある。欲求を満たすのにはこれ以上なく良い場所です。なにせ私のような頭のおかしい一般人でも気軽に応募できますから。

 非常に口の悪い言い方をすれば、ピアプロは作詞の練習場所として、また気が乗った時に他の方の作品をちらっと見るための場所として、いいように使わせてもらっている状態です。私のような平易な歌詞を書く人はあまり注目もされませんから、なおのこと都合が良い。誰からも横槍が入ることがなく、下手な意見にも邪魔されず、自分の詞の形だけを温めることができる

 多分、向こう数年はこのピアプロという場所にお世話になるだろうなと思います。ここまでこの記事を読んだ方はおそらくピアプロにも顔を出している方でしょうから、「らでぃ猫」という名前を見かけたときには「あの頭のおかしいやつが来たぞ」とでも思っていただければ(笑)。

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